西  区
●おしゃもじ様
 鎌倉時代のはじめ、将軍・源頼朝が狩りをしに、戸部のあたりまで馬を走らせて来たときのことです。暗闇坂(くらやみざか)で食事をしたあと、なぜか頼朝は、ご飯を盛ったしゃもじを土にさし、鎌倉へ帰りました。ところがその後、不思議なことに、土にさしたしゃもじから、芽が吹き出してきたのです。村人たちは「これは神様の木だ」といい、小さなやしろを建てて、おしゃもじ様としてまつることにしました。おしゃもじ様には、百日ぜきを治すご利益があると伝えられました。それというのも、しゃもじは、ご飯などをよそうもの。ご飯を食べればのどが開き、のどが開けば、せきが止まるからです。いつしか神木は枯れ、やしろは坂下の杉山神社に移され、今度はこちらに百日ぜきを患った子供や村人たちが訪れるようになりました。そして治してもらったお礼に、幾十ものしゃもじが、この神社に供えられたということです。
※出典「市民グラフヨコハマ第111号・民話の里」。一部、改編したところがあります。