緑  区
●霧が池の大蛇
 むかしむかし、霧が丘は人里離れた森でした。その森の中に、一匹の大蛇が静かにすむ、霧が池という美しい池がありました。ところが、時がたつにつれ、まわりに田畑がつくられ、村人たちもこの池に姿を見せるようになりました。ある夏の昼下がりのこと。大蛇が池のほとりで昼寝をしていると、村人が丸太と間違え、大蛇の上に腰を下ろしてしまいました。驚いた大蛇は、もうこの池にはすめないと悟り、宝袋寺という寺の住職の夢まくらに立ち、自分のために石のやしろを建ててほしいと訴えたのです。 しばらくして、村はききんに襲われました。二年間も雨が降らず、米がまったくつくれません。困った村人たちが、この大蛇のやしろに雨ごいをすると、たちまち雨が降り、米がたくさんつくれるようになりました。村人たちはたいそう感謝し、そのやしろを立派に建て直し、大蛇の好物のたまごを奉納するようになったということです。
●不思議な大石
 むかしむかし、一人のお侍が敵に追いつめられ、長津田へ逃げてきました。いばらの中に身を隠しましたが、四方から火をつけられて焼かれてしまいました。その焼け跡に、大きな石が残されていました。村人たちは、「お侍が姿を変えた神様の石だ」と目を見張りました。石は、武蔵と相模の国境にあったので、両方の国の村人が「守り神にしたい」と取り合いになりました。ところが、いくら相模の方に動かそうとしても、反対の方にしか動きません。そこで相模の村人はあきらめ、武蔵の方に、石をまつるお堂をつくることになりました。すると、石がどんどん大きくなり、初めにつくったお堂も、次のお堂もこわしてしまうという不思議なことが起りました。困った村人たちは、これ以上石が大きくならないように、四角い台石をつくり、その中に石をがっちりとはめ込み、大きなお堂に納めました。これが大石社のはじまりということです。
※出典「市民グラフヨコハマ第111号・民話の里」。一部、改編したところがあります。