坂東三十三札所の第十四番「瑞王山弘明寺(ぐみょうじ)」という高野山真言宗のお寺。本尊は、行基が一刀三礼の鉈彫りで刻んだといわれる十一面観音。有料で拝観できる。京浜急行が本堂と裏山を分かつように走っている訳だが、いつもここを通過するたびに寺の墓地の中に迷い込んだような感覚が一瞬襲ってくるのは、寺と裏山との関係を緊密なものと信じているせいだろう。
できることなら、横浜で乗り換えて、市営地下鉄の弘明寺駅から寺へ向いたい。ここが横浜?と思えるような門前町(弘明寺商店街)があって、屋根の高いアーケードの下では、多くの人通りと賑やかな呼び声が響いている。そごう横浜店のデパ地下で大人気の「藤方豆腐店」もここにある。オススメは、とんこつスープの「マンザイラーメン」と、練り物の「鈴木かまぼこ」。
弁財天、神宮皇后、閻魔大王、奪衣婆。そう、ここはもうテーマパーク。つまり、札所巡りは、江戸時代の庶民の慰安旅行なのだ。
桜の咲く頃(大岡川プロムナード)
大岡川は、磯子区の円海山のふもとを源流に、中区桜木町・みなとみらい21地区までの、全長約15Kmの河川。桜の開花時期になると、大岡川プロムナードは人の波であふれる。見事な桜並木が続くのは、弘明寺の観音橋から黄金町の太田橋辺りまで。川と桜の木の間に挟まれるように整備された遊歩道を歩くと、さながら桜のトンネルの中にいるようだ。この桜並木がどのような経緯で植えられたのかわからない。寺に詣でて精進落とし。昔の人は、粋で洒落だった。