No.109
 朝日文庫刊「建築探偵・神出鬼没」を読んで、前々から憧れていた銭湯・船岡温泉。6年前は改装工事中で入れなかったが、今回再チャレンジを試みて思いを遂げた。料理旅館船岡楼に付属して建設されたもので、昭和3年新設の軒唐破風のある鞍馬口通側に面した玄関、脱衣場の欄間の彫り物、天井中央にある奇抜な極彩色の浮き彫り、脱衣場から浴室への通路は菊水橋の石造欄干を転用、内部には装飾タイルを多用するなど奇抜な造形で知られる。
 京都市北区紫野南舟岡町にある。創業は大正12年だという。電気風呂やジェットバス、サウナに露天風呂などお風呂がいろいろ楽しめ、近隣の人たちの裸の社交場として親しまれている。えてして「東男」は嫌われるものだが、番台のおかみさんも、孫を連れた昭和1ケタ生まれの、船岡温泉で産湯を使ったというオジサンも、結構、気さくにいろんな話を聞かせてくれた。洛北観光のついでに、ひとっ風呂!ぜひお勧めしたい。最寄りのバス停は「千本鞍馬口」か「建勲神社前」で、いずれも徒歩5分。
唐破風の玄関
番台と脱衣場入口
天井の牛若丸と天狗
ぐるりと欄間に彫り物
有名な肉弾三勇士
ついつい見とれる
浴室への入口上壁
浴室へ続くタイル装飾
浴室通路は橋の欄干
周 辺 探 訪
 せっかく来たのだからと千本北大路バス停で下車し、京都の北(玄武)を守る船岡山で夕陽を眺め、建勲神社に立寄ってから船岡温泉へ向った。廃業して今は「サラサ西陣」という喫茶店になっている兄弟銭湯・藤ノ森湯は見逃してしまった。残念!
 ところで紫野は、鳥辺野と相対する葬送の地・・・合掌の心で訪れよう。
後冷泉天皇火葬塚
幸を焼き滅ばさせない
船岡山頂上の眺め
三角点と焼却炉
至るところにある石塔群
建勲神社参道
祭神は織田信長
敷地外にある船岡神社
特異な建築物が多い