<おりえんとびいなす>
おりえんとびいなす
日本クルーズ客船
約21,800総t/全長174.0m/全幅24.0m
乗客数390(600)人/乗組員数120人
ダグラスワード★★★+
関釜フェリー、阪九フェリー、新日本海フェリーなどをグループとするSHKグループの建造した、
もっぱら大阪・神戸を中心に運行しているチャータークルーズ船だ。
関西人を顧客としているだけに、合理的な運行システムをとり、
「こんなんで、よろしおまっか!?」というサービスと料金には頭が下がる。
企業などのチャータークルーズが主力だから、2段ベッドで1室4人定員のキャビンが多い。
また、広いレクチャールームなど各種の設備も研修や会議を強く意識したものになっている。

★ 鳥島クルーズ
 PDS(パシフィックツアーシステム)という西武セゾングループの旅行社が、日本で一番多くのクルーズを企画・手配している。そのため、結構面白い企画クルーズを打ち出しており、このアホウドリの保護活動を船から実感する鳥島クルーズをはじめ、客船内すべてが劇場と化して様々な推理劇が展開されるミステリークルーズや、夏休み中の回送客船を利用した子供向けウルトラマンクルーズなどユニークなものを手がける。もちろん、クルーズそのものを楽しむ旅行も提案したりするが、その場合はクルーズ会社の商品を売り込んだり、海外クルーズと旅行をセットして販売したりしている。独自に「クルーズレター・マガジン」という雑誌を年2回発行。また、海事プレス社から月刊「クルーズ」の臨時増刊として「間違いのないクルーズ選び」という本を添乗員の実体験アドバイスをもとに発行した。ある縁で、そのスタッフにすすめられるまま鳥島への船旅となった。
横浜港を夜半に出港すると鏡を打ったような浦賀水道を進む。ただただ広い太平洋を、暗闇と波とをかき分けて南下していく。大島沖を過ぎ、大きなうねりに船が静かにゆったりと上下しはじめた。こうなるとあとは寝るに限る。雨が降ったり止んだり、春の不安定な気候を実感する。昼ごろ、船内アナウンスが鳥島の接近を知らせると、水平線から忽然と荒涼とした火山島が近づいてきた。アホウドリのデコイが斜面に点在する。鳥島を3度周回していると、波間に漂い、空を滑空する鳥が見える。アホウドリかと目を凝らすがアジサシのようだ。遙か上空の雲の切れ間からプロペラ機が舞い降りてきて、わずかに主翼を振りながら目の前を通り過ぎてゆく。絶海のただ中で合図を送る海上保安庁の船や飛行機が船乗りたちに神や仏のように見えるというのもうなずける。
春の海は、宮城道雄の琴曲のような穏やかさはなく、季節の変わり目を物語るかのように、方向を変えて襲いかかる。鳥島を離れ、太平洋に100mの高さでポツンとたたずむ孀婦(そうふ)岩まで南下。さまざまなイベントが催される中、岩を周回して折り返しの帰途につく。
日没とともに低気圧があらわれ、船の北上を追いかけるかのように、荒天の中での航海となる。船酔いのためか、夕食には3分の1ほどしかレストランが埋まらなかった。船側をたたく大波と、空を切るスクリュー音、そして小刻みに上下するエレベーターのような揺れに悩まされ、なかなか寝付かれなかった。少々くらくらした朝だが、子どもは酔わずに元気に走り回っている。千葉沖の凪の海を眺めながら朝食を採っていると、大きな歓声が聞こえる。見るとクジラの尾びれのようなものが海面をたたいて沈んでゆくところだった。