拡大写真 no.105 光太夫、くいだおれる
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 コテコテの大阪は、関東人にとっては怖いところと思われている節がある。「何ゆうてんねん」もそうだし、「どついたろか」もそうだし、「こいつアホや」もそうだ。口が悪い。
 でも、大阪や京都、関西人にしてみれば、関東の東京や横浜は口が悪く、怖いと感じているらしい。ある統計でも関東と関西との婚姻率はかなり低いといわれている。
 日本と韓国が近くて遠い国と例えられるように、関東と関西は新幹線で2時間半、飛行機なら45分という距離にもかかわらず、やはりお互いに距離間を感じている。源氏と平氏、豊臣と徳川、京都と江戸の歴史性も一因だという説があった。
 さて、大阪に到着したら、まず大阪駅の北に位置する新梅田シティというビルを目指そう。ウェスティンホテルもさることながら、空中庭園という展望フロアがすごいのだ。
 大阪市内に、かなり高層ビルが林立してきたので、一望するとはいいがたいものの、青空天井のオープンフロアでかなり強烈なインパクトを持った展望に絶句する。そこから、地下へ潜ると今度は、大正・昭和の町並みを思わせる飲食街があって、おまけに早い安い旨いの三拍子そろったものが食べられる。おすすめの場所だ。今回は「喝鈍」でソースかつどんを食べた。これで500円なんて横浜じゃ考えられない庶民の味に脱帽。
 空中庭園の案内嬢の話では、市内で一番高いのはトレードセンターの「WTCコスモタワー」、全国的に有名な「通天閣」、「大阪城天守閣」の展望も捨てがたいという。それらをひっくるめて「大阪出世タワー七巡り」というのがあるというのだから実に大阪らしいまとめ方だ。
 そこから、駅へ戻り、バスか地下鉄で心斎橋へ行く。日本の商店街の原点といおうか見本といっていい場所だ。それだけに人波に遅れず急がず歩いていかないとぶつかってしまうほどの人通りの多さで、それにもかかわらず百貨店が苦戦し、あのそごうが店じまいをしたのには日本の不況の根深さを感じさせられる。
 ここまで来ると「くいだおれ」の町、道頓堀は目と鼻の先。すうどん食って、たこ焼き食って、ラーメン食って、カニ食って、当然決まりは「くいだおれパフェ」を食う。この努力で「くいだおれカレンダー」が当たった。うれし〜。
 途中、アイスクリーンの旗をひらめかせた自転車のおじさんや、後ろに倒れんばかりのおじさんに出会った。グリコの看板も、路上の得体の知れない絵描きも、全部が全部大阪バージョンとしか思えないのだから不思議な町だ。
 ちなみに、大阪では大きな通りを「筋(すじ)」という。結構、縦横に道が通っていて町並みは整然としているはずなのだけれど、京都のように頻繁に行っている訳ではないから、東山・西山・北山・叡山・京都タワーといった目印にも事欠き、方向や自分の位置を知るのが容易じゃなかった。
 大阪城へ向かう。バス・地下鉄に乗り放題のパスは、その点重宝したし、交通網がかなりよくできているので効率よく使えてお得。ここにもやっぱり大阪気質が生きている。
 広大な大阪城公園へ入ると、天守閣は豆粒のような大きさでずっと先に見えた。途中の林の中には、どこもかしこもホームレスのホーム=青いビニールシートで造った家が建ち並んでいる。公園とはいえ、ほとんど黙認の市営住宅としか思えない。夜の公園となると散歩やジョギングに最適といわれるが、ここ大阪城公園はさすがに昼だって無理だと思う。入園料600円を払う天守閣エリアでは、当然ホームは建っていない。もし建っていたら「高級住宅街」と呼ぶのだろうか。
 大きな石垣をくぐってエレベーターで最上階の8階へ。改修で整備され、車いすで行ける天守閣はここだけだと思う。地上約50mの展望も広い庭園があるから、すばらしい眺めが一望できる。そこから1階ずつ降りていくといろんな展示が見られる。
 豊臣秀吉関係の話。芝居に困ったら「忠臣蔵」か「太閤記」といわれるくらい話のネタに事欠かないので、結構見応えがある。最近の調査で、豊臣時代の遺構はすべて今の敷地の地下に埋め込まれていることが判った。ということは、例の石垣や伝説のある井戸やそのたもろもろのことは江戸時代になって造られたということになる。大阪城を築いた豊臣秀吉もすごいが、それをすべて土や石垣で覆いつくした徳川もすごい。ちなみに、大阪城の前に、ここは石山本願寺という御坊があって、織田信長が長年にわたり攻めあぐねた要衝の場所だったので、豊臣秀吉が自分の居城を設けたのだという。
 次に下半身事件の横山ノックで一躍有名になった大阪府庁まで行き、バスに乗り込んで、今度は四天王寺を目指した。が、ちょうど閉門の時間、広い境内を半周したものの、四天王寺様式と呼ばれる中心伽藍は見ることができなかった。それならばと今度は通天閣に向かった。
 天王寺公園を横切る。するとここもホームだらけだった。それだけではなく、新世界に近いだけあって、ビニールシートでできたカラオケハウスや居酒屋までそろっているのにはあ然とした。デジカメ撮影でおじさんに囲まれたことを除けば順調に通天閣に到着したにもかかわらず「本日営業終了」の看板が貼られてしまった。私の資料では終了は午後6時のはず、午後5時半ではおかしい。次から次にお客さんがやってきては「あれ〜?」の声がでる。割り切れないので聞いたところ「今日はおしまい」という返事。やっぱり大阪はすごい。
 こうなれば、ずぼらやでフグか、八重勝で串カツに決まっている。のどもカラカラだし、歩きまわってお腹もすいたので「八重勝」に決定。当然、行列していたものの待つこと十分。キャベツをつまんで、ソース2度漬け禁止の串カツとドテ焼でたらふく生ビールした。懲りもせずデジカメしていたら、店のおやじさんに「この店じゃ写真が一番高いよ」といわれた。ひょっとしたら割増し料金を払っているはずだから、今回はぜひ紹介させていただいた。
 大阪のラストナイトは、ジャンジャン商店街で串カツにチャレンジして欲しい。帰りがけの駅のガード下では、ハーモニカおじさんが素敵なメロディーラインで見送ってくれるはずだ。